SOLジャパン(組織学習協会)のセミナーに参加するために国連大学に向かった。セミナーのスピーカーには「知識創造企業」の著者である野中郁次郎氏、そして、「最強組織の法則」の著者であるピーター・センゲ氏であった。
ピーター・センゲ、この名前を知っている人も多いであろう。私が「最強組織の法則」を読んだのは今から10年ほど前になる。よりよい経営とは、よりよい組織とは何か、ということを考えていた際 に出会った本であった。
この「最強組織の法則」では”Learning Organization”というコンセプトを提唱し、組織に属する人が最大限能力を伸ばし、そして、組織全体の目標に向かって、チームで共に学びながら成長していくための方法論をまとめた本である。出版当時、革新的な考え方ということで賞賛を持って多くの読者に受け入れられたが、その考え方は今でも十分に革新的である。この著書から「組織学習」という考え方が広まっていったと言っても過言ではない。
現在、私が所属しているGOLという組織は「Globis Organizational Learning」である。この組織名もこの「最強組織の法則」で提唱されたコンセプトをベースに考えられたものである。
その後、センゲ氏を中心に書かれた「出現する未来」は組織を超えて、新しい社会を作っていくために我々は何ができるのか、ということを考えさせられる本であった。センゲ氏は経営学者の枠を超えて活躍していることがうかがえる。
そのセンゲ氏は私がぜひ会いたかった人の一人である。今回セミナーの案内があって真っ先に申し込みを行った。
セミナーでは、最初に野中氏の話があり、その後、センゲ氏がバトンを受けた。センゲ氏はパワーポイントのスライドを一切使わない。自分の経験したこと、考えていることを情熱的に語りかけていく。センゲ氏が語ってくれたことを簡単にまとめると以下のような内容である。
「産業革命後の社会は大きな成長を遂げたが、このままのシステムでは持続はできない。そして、今多くのひずみが生まれている。生産性ばかりを追及する企業が輩出するゴミやガス等によって自然が破壊され、人類自身も自らを害するようになってしまっている。一方で、自然界は全てが調和し循環している。我々人類もその循環可能なシステムから学ばなければならない。
また、人は元来多様な存在である。しかしながら、学校教育や企業の中での教育によって画一的な多様性を排除された人間が生産されてしまっている。利益追求のためのマシーンのようになってしまっているが、本当はその人の持っている価値観があるはず。その価値観に根ざした生き方に転換しなければならない。」
話を聞いていて、非常に共感できる内容であった。
その後、「カフェダイアログ」という手法を使って、野中氏、センゲ氏の話を受けて感じたことを4人一組で語り合う時間がった。私が言ったことを簡単に書くと、「一人ひとりが”よく生きる”とは何か、ということを深く考えていくことが大切。そして”よく生きる”という状態は人によって違うはず。そのようなことを考え、行動する勇気を持つことが必要では。」というようなことであった。
約5時間に渡るセミナーであったが、大変充実感のある時間であった。