タイトルに惹かれて衝動買いをしてしまった本を読み終えた。その名も
「行動主義」
である。
この本は建築家であり思想家でもあるレム・コールハース氏を追いかけたドキュメンタリーである。コールハース氏は1975年にOffice for Metropolitan Architectureを設立し、数々の建物の設計を手がける。その後、ハーバード大学教授にも就任し、2003年には世界文化大賞を受賞している。
私がコールハース氏を知っていたかというと「否」である。この本を手にとって初めて知った。しかし読み終えて、すごい人物がこの世の中にはいるものだと驚嘆をした。
何に驚くかというと、その仕事振りである。
コールハース率いるOMAはコンペに勝ちまくっているそうである。シアトル公立図書館、ロサンゼルス郡立美術館、スペインのコルドバ会議場、ポルトのコンサートホール、オスロの図書館、中国の中国中央電子台本社ビルなどなど。それらは全てコールハース氏が仕切っている。従い、アメリカ、ヨーロッパ、中国、アフリカなどを転々と飛び回り、その各地で連続でミーティングを重ねていく。
膨大な情報を処理しながら意思決定を重ねていく。スタッフの考えを聞きフィードバックを与えて、間違っていれば怒号を発する。スタッフの作業プロセスはコールハース氏とのミーティングに向けて収束し、その後また拡散していくということが繰り返されていると著者は評している。
普通の人ならばひとつの領域に満足しているところを、コールハース氏はたくさんの関心を持ち、すべてを同時にこなそうとする。いくつものプロジェクトを同時に進める。海外を飛行機で飛び回りながら仕事をしていく。建築だけではなく政治や経済などにも興味を持つ。そんな人物だそうだ。
一方で、コールハース氏は飾るところがなく徹底したリアリストでもある。例えば「あがっていくのは建築家としての評判。下がっていくのは建築家としてのクリエイティビティ。」という認識を持ち、有名になることに意味を見出さず行動をすることに価値を置いている。
また、現実との接点を非常に重要視しているところも素晴らしい。「僕達の仕事のかなりの部分は文化的な違いやズレを鋭敏に感知することによっている。ニュアンスをちゃんと知覚するためには、現実に身をさらしておく必要があるのだ。」ということを語るのである。
決して過去の栄光に浸ることなく、現実にどっぷりと浸かり、そして、行動することこそが生きる道であることを認識している。
「行動主義」、素晴らしい人物に出会える本である。
コメント