「感動を売る!」という本を読む。この本は、「地球探検隊」という変わった名前のブランドを持つ旅行会社エクスプローラーの中村伸一さんが書いた本である。
同社は、主に海外の旅行会社が企画している現地発着ツアーに絞り込んで大手から差別化をしている。現地発着ツアーとは、例えば、オーストラリアのとある都市に全世界の国から集合した十数名の人たちが、同じバスに乗ってツアーを巡るというものだ。
私も大学の卒業旅行は一人旅でニュージーランドの同コンセプトのツアーに参加した。年代もバラバラ、出身国もバラバラのメンバーが集い、徐々に仲良くなりながら約20日間ともに時を過ごしたのだが、貴重な経験であった。
この「感動を売る!」では、なぜ起業をしたのか、どうやって成長してきたのか、ということが書かれているのだが、非常に面白い。
タイトルにあるように「感動」を軸に商い(ビジネスという言葉が当てはまらないのでこう書きます)をしているところがユニークである。
私も経験した現地発着ツアーは、いわゆる大手代理店が企画している海外ツアーと比較して日本人用の親切度は極度に低い。日本食を食べさせてくれるなんてことは一切ないし、日本語のガイドもない。また、旅の途中途中のオプションは自分で選択をしていく必要がある。
なので、大手代理店が企画するような手厚いサービスに慣れた多くの日本人にとってはハードルが高いのである。しかしながら、それだけに、外国の人と心を通わせられた喜び、そして、旅の合間での出会いでの感動が大きいのである。
中村さんはその「感動」の声をまとめて冊子にして配布し、さらにうまくパブリシティをしかけ、さらにメールマガジンを作って、口コミを連鎖的に生み出すことができるようになっている。また、お客様を「隊員」と呼び、自らを「隊長」と呼び、お客様と会社という垣根を考えず、ともに感動する仲間であると位置づけているところも面白い。
この本を読むと、我々は「売上」や「利益」という数値的な指標に目を向けてしまうが、お客様の「感動」があるからこそ売上が生み出されるということを再認識させられる。中でも私が好きだったのは以下の件である。
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たとえ事実はひとつであっても、ものの受け取り方、感じ方ひとつで楽しめることを体験から学んで欲しい。そうすればあなたの人生は驚くほど変わるはずだ。
楽しいことは、待つのではなく、自分から作り出すものだ。恥ずかしがっていないで、とにかくやってみてほしい。かっこ悪くたっていいじゃないか。どんな格好でも、真剣にやる姿は、まわりを変える。自分が変わればまわりの目が変わる。
10年前、1人で孤軍奮闘していたとき、小さくとも存在感のある会社を作るのが夢だった。一緒に夢の実現を喜べる仲間の存在、スタッフの存在は大きい。今は起業前に心に描いていたイメージそのものだ。どんどん夢もカタチになって、大きくなっていく。
(中略)
この仕事が終わってしまったら面白くない。私にとってこの仕事は「終わらせない遊び」なのだ。
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一気に読むことができる本である。ぜひ多くの人に読んでもらいたい。
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