「ビジョナリーカンパニー」を読んだのは今から10年ほど前になる。読み終えてこんな会社が世の中にあるのか、とワクワクした記憶がある。その後、著者の一人、コリンズ氏は「ビジョナリーカンパニー2」をしたためる。この「ビジョナリーカンパニー2」は言わずと知れた名著である。
そして、もう一人の著者がこのたび新しい本を出した。ジェリー・ポラス氏ほかが書いた「ビジョナリーピープル」である。
本書は、仕事やコミュニティにおいて独創的な成果を上げつつ、自分なりに生きがいを感じる生活を送ってきた世界中の200人以上の人たちとのインタビューをもとに書かれている。アメリカの著者が書いた本であるが成功の基準が経済的な指標ではなく、上記のような独創性と生きがいとしていることも興味深い。
その200人超のインタビューから著者たちがたどり着いた成功の鍵は大きく以下の3つに集約される。
1)意義が感じられ、情熱を注げることをする
2)正しい思考スタイルを持つ
3)正しい行動スタイルを持つ
1)については説明が要らないだろう。2)と3)について簡単にポイントを以下にまとめる。
2)の正しい思考スタイルとは、一言で言えば「ぶれない」ということであると読み取った。失敗があっても自分が信じた道を進む。そして、失敗すら糧にしていく。また、自分に弱みがあったとしても、それを補完する仲間を得たり、時にはうまくできない自分すら受け入れて「ぶれず」に取り組む姿勢・考え方を持つことが大切である。
3)の正しい行動スタイルとは、リスクを受け入れ大胆にチャレンジすること、建設的な対立から逃げずに火中に飛び込んでいくこと、そして、言葉によって周囲を巻き込み全てを結集させること、に集約できる。
これらの3つは、平行して読んでいた仏教の本にも通ずるところがあり面白い。
ブッダは8つの正しい道を「八正道」と呼んだそうだ。八正道とは、正しく見極めることを「正見」、正しく思うことを「正思惟」、正しく話すことを「正語」、正しい行動を「正業」、正しい生き方をすることを「正命」、正しく努めることを「正精進」、正しい心と願いを持つことを「正念」、正しい心の安定、落ち着きを持つことを「正定」の8つである。
「ビジョナリーピープル」で提示されている3つの成功の鍵のうち、2)と3)は上記の八正道でも謳われていることと近い。1)の「意義が感じられ情熱を注げることをする」ということも、八正道で言う「正命」や「正定」、「正精進」と近い印象を持った。
正しい生き方というのは世代や地域を越えて普遍的なものがあるということなのであろうか。二つの書籍が私の中で繋がりシンクロしたことで不思議な気分となった。
いずれにしてもキャリアや生き方について模索している人にとっては「ビジョナリーピープル」を読むことで示唆があることは間違いない。