毎週2~3冊程度の読書は継続的に行っているのだが、先週と今週に読んだ本は元産業再生機構COOの冨山和彦氏の以下の2冊である。
冨山氏については昨年書いた「ASKA会議 最終セッション「変革」」のエントリーでも触れているのだが、企業再生の現場で得た経営への洞察が鋭く、学ぶべきところが多い。
2冊のうち、特に「会社は頭から腐る」は産業再生機構で取り組まれた41社の企業再生からの考察をまとめておられ、非常に重たく、心に留めるべき言葉が多い。
私がアンダーラインを引いたところをピックアップする。
「経営とはとにかく人である。人の動きがすべでである。人の行動を支配している動機付けやその人の人間性と、組織として追求しなくてはならない目的や戦略とが同期するとき、両者は最小限の葛藤で最大限の力を発揮する。」
「合理だけ、理屈だけでは物事は前に進まない。個々人の動機付けや性格という情理を理解しなければ経営はありえない。窮地に陥った企業とて、個々の社員に問題があるわけではないし、個々の社員自身が根っこから腐っているわけではない。それは、マネジメント、会社の仕組みに問題があるのである。理と情を整合的に動かせられない仕組み、個々の社員の自己益と企業体の組織益がシンクロしない構造になっていたということなのだ。」
「これからの経営には、根本的なエコノミクスの変化を見据えながら、細かな戦略のPDCAも同時に拘束で回してく能力が求められる。(中略)ここで問われてくるのは、経営における相当にレベルの高い判断力だ。徹底的な合理が必要なのである。」
「小さな会社を経営していれば、競争の凄みや怖さがわかる。失敗は下手をすれば死を意味するからである。個人保証を入れて中小企業を経営している人は、失敗したら、社会人としてほとんど死に瀕するほどのダメージを受ける。(中略)大組織、一流企業の失敗とは所詮その程度のものなのだ。上司に怒られ、左遷されるだけですむなら、中小企業の経営者からすれば、鼻で笑ってしまう程度のものだろう。」
「これから求められるリーダーはどんなリーダーなのか。少なくとも、組織として予定調和的に偉くなろうとしている人には無理だろう。むしろ、組織から、はみ出そうとしているくらいの人間こそ、必要とされている。はみ出すほどの根性がない人間を、これからのリーダーにすべきではない。」
「リーダーは徹底的に現場に入っていかないといけない。(中略)できれば、自ら現場にいってガチンコ勝負に挑むべきである。望んで飛び込んでみる。そして、沢山の修羅場を、失敗を、冷や汗を経験する。」
いずれも含蓄のある言葉ばかりである。冨山氏の本を読み、経営教育という分野に携わる人間として、また、一人のマネジャーとして、「合理だけではなく、情理に眼が行っているか」「現場でガチンコ勝負をしているか」という問いを自らに立て、律する必要性を感じる。
読みえ終えて背筋がピンと伸びる書籍である。
コメント