ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー2005年7月号に「ジェットブルー:充実の瞬間」というジェットブルーのニールマンCEOへのインタビューが載っているのだが興味深いので共有したい。
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私の人生観と会社の経営方針は20年以上前の出来事に影響を色濃く受けています。私は高校時代を通じて目立たない生徒でした。ユタ大学での1年が終わったころ、教会の伝道グループに参加し、ブラジルのスラム、ファベラに住んで働くことになりました。
父がジャーナリストでしたので、私たち家族は、私が5歳までブラジルに暮らしていたことがあり、それ以降も夏には何回か訪れていました。
ブラジルという国は「持つ者」と「持たざる者」とに二分されており、父と暮らした時代は豪邸やカントリークラブという裕福な面しか知りませんでした。しかし、不況で訪れたときには、絶望的な貧困にあえぐ人たちと共に、鉄条網の反対側にいる自分に突然気づいたのです。そこには、1日歩き回っただけでいつの間にか靴が人糞臭くなるような所でした。
ファベラで暮らすなかで、はっとさせられたことがいくつかありました。まず、金持ちの大半が傲慢さ、つまり自分たちはスラムに暮らす人たちよりも優れているという意識を抱いていたのです。
第2に私が出会った貧しい人たちは、金持ちよりも幸せそうで、しかも、わずかばかりのものでも、他人と分かち合うことに信じられないくらい頓着がないのです。
そして、第3に、これが最も驚いたのですが、私自身もこれまで以上の幸福を実感したのです。客観的に考えると、これはありえないことでしょう。
私はまだ年端もいかない若造で、家から離れ、家族との連絡は週1回の手紙、年2回の電話しか許されない状況でしたからね。惨めな思いになっても当然でしたが、実際は逆でした。仕事を通じて、大きな喜びと充実感を味わうことができたからです。
ブラジルでの活動を終える際の面接で、面接官は私に生涯忘れられない言葉をくれました。
「デイビッド、あなたはアメリカに帰り、元の生活に戻るでしょう。これからは、あなたがやることはすべてあなた自身のためのものです。大学へ通うことも、お金を稼ぐことも、すべてそうです。そして、あなたは人に奉仕しているとか、だれかの役に立っていると感じることがない限り、ここで感じたような充実感は決して味わえないでしょう。」
彼が掛けてくれたこの貴重な言葉は私の心にずしんと響きました。それ以来、ずっと私の座右の銘です。
あの経験から得た二つの教訓がジェットブルーの経営方針を支えています。それは自分にも社員たちにも富や地位にかかわらず分け隔てなく接するように努め、他者の役に立つ機会を提供することです。
たとえば、私が出張する場合、高級車のリンカーン・コンチネンタルを使うかと聞かれても断ります。普通の中型のレンタカーで十分なのです。当社には専用駐車場もありませんし、私のオフィスに置いてあるコーヒーはジョン・F・ケネディ空港にある従業員専用ラウンジにあるものと同じです。
当社の航空機には1つのクラスしかなく、足下の広い座席は後方にあります。それは最後に降りるお客様に、フライト中はよい座席でゆっくりしていただこうという配慮からです。私がオフィスで使っている机と椅子は、ほかの社員とまったく同じものです。パイロットたちにもいつも言うのですが、給与が高いからといって、それをひけらかすようなことをしてはいけません。
今週、私は仕事でフロリダまで行くのですが、往復の機中ではクルーと一緒にドリンクや軽食をお客様に出したり、ゴミを回収したりします。みずからお客様のお世話ができる絶好のチャンスですからね。
全社規模では、全社員からの拠出金による「ジェットブルー・クラウンメンバー緊急基金」を設けて、困っている社員を支援しています。たとえば、女性社員がガンになった場合、もちろん、保険の援助は受けられるとはいえ、留守中のベビーシッター代が必要になるかもしれません。
このように手厚い待遇が受けられる会社、つまりたとえ緊急事態が起きても、他の社員が自分を助けてくれるような職場であれば、社員たちは仕事にベストを尽くし、お客様には、きめ細かい気配りをしれくれるはずです。
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厳しい環境下にある航空業界において、急成長を続けるジェットブルーのCEOにこのような価値観があることに驚きを感じると共に、経営とは何か、人としての幸せとは何かということを考えさせられる内容である。
人への奉仕、人に役に立つこと、これこそが商売(あきない)の原点ということを思い出させてくれる。人に役に立つことがうれしいから継続できる、だからこそ”飽きない”のである。この原点を忘れた人や企業は早晩うまくいかなくなるだろう。
自らを省みる上でとてもためになる記事であった。
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