以前、「ホテルルワンダ」という映画について紹介したブログを書いた。ルワンダにいるフツ族とツチ族という二つの民族の対立が激化し、フツ族が100万人とも言われるツチ族を殺害するという大虐殺の最中、一人のフツ族のホテルマンがツチ族の人々を救う、という実話を映画化したものだ。
このルワンダの虐殺の出来事を小説にした本が出版された。著者は曽野綾子さんである。本の名前は「哀歌」である。
私は曽野綾子さんの本のうち、「ほんとうの話」、「心に迫るパウロの言葉」「失敗という人生はない」などについては学生のころに読んでいたが、今回曽野綾子さんの本を読むのは数年ぶりであった。
私は曽野さんの徹底的に現実をリアルに見つめ、人に対して期待をすることはないが、しかしながら、人に対して大いなる優しさと愛情を感じさせる文章が好きだった。この哀歌を詠むにあたって。その曽野さんがルワンダの惨状をどのように描くのか、という思いをもって読み始めた。
この小説の舞台はルワンダの修道院である。その修道院にいる日本人女性である春奈の視点からこの虐殺が語られていく。次々に人が殺されていくという環境の中で、人が簡単にも殺人者に変わっていくということ、そして、そのような中でも助け合おうとする人がいること、そして、傷つけられたとしても強く生きていく人がいることが描かれている。
あまりにも哀しいことが書かれている小説であるが、読み終えて、厳しい環境や過酷な現実の中でも人間としての尊厳を保ち生きる意味を見出すことができる人がいる、という希望を持つことができる。曽野さんらしい小説で素晴らしい内容であった。
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