高橋俊介氏の「人の育つ会社をつくる」を読む。
同書では「日本の組織で、人が育ちにくくなっている」という書き出しから始まる。「日本企業の過去の強みはOJTであったが、それが廃れはじめている。その要因は人材の流動性の高まり」であるという。
流動性というと外に流れるとイメージしがちであるが、社内においても「仕事のあり方がプロジェクト型に変化した結果、社内においても昔のようにとある部署に配属された若手社員を長い期間かけて育成するということができなくなっている」という。つまり職場環境の変化によりOJTが機能しなくなっているのだ。
一方の若手社員は、「これまでの経験から得られた”成長実感”だけではなく、これからの先を見据えて自らが成長できるかどうかという”成長予感”について敏感になってきている」と語る。
この点については、私自身もそうだし、GMSの受講生の方々も、将来にわたってどのような成長ができるかということを常に考えていることを考えると納得できる。
これは何を意味するのかというと、若手社員は自らの成長というものに対する意識は高まってきているが、前述のOJTの衰退によって、多くの日本企業はその期待に答え切れていないのだ。
このような環境下にあって組織はどのような動きをしているのか。同書の欧米に対する研究によると、「モトローラーやルノーでは全社員の平均研修参加時間は約40時間で欧米では水準的」であるという。また、「GEではクロトンビル研修所だけの年間予算で120億円、全世界で1,200億円を人材育成に投じる」そうだ。
さらに「フォーチュン誌で発表している「もっとも働きやすい会社」ベスト10に選ばれた会社のトップ10は社員の年間研修時間は57時間だ」という。「一方日本企業ではそれに遠く及ばない。従い、OJTが崩壊しつつある中で組織全体で意図を持って人材を育成していく必要性がある」と同書では結論付けている。
私はこの意見に大いに賛同する。日本企業において、昔はOJTや先輩の語りかけによって伝わっていた会社としての価値観、そして、共有に持つべき判断軸、そして、業務を推進していくコアスキルというものが、現在は伝承しにくくなっている環境がある。
それに対して何も手を打たないというのは不作為である。意図を持った仕掛けを組織として経営の中に埋め込んでいく必要がある。
そのためには研修を通じて、とある知識をインプットするだけではダメである。本当の意味で仕事に直結するスキル・思考特性、さらには価値観を変容させるような取り組みをOffJTである研修で実現させていかねばならない。
現在、我々GOL部門ではクライアントの方々と一緒にそのような取り組みを重ねている。これからもクライアントの方々と新しいスタイルの人材育成の仕掛け・仕組みを作り出していきたい。
この本はマクロ的に日本企業の課題について語られていて、我々GOLの取り組みについての参考になるところが多い書籍であった。
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