「ヒューマン2.0~Web新時代の働き方(かもしれない)」を読み終えた。著者の渡辺千賀さんはグロービス・マネジメント・バンク社長の岡島さんの親友ということもあって、身近な気持ちで読み始めたが面白い内容であった
「ウェブ進化論」ではインターネットにおけるウェブ2.0の世界とそれによるビジネスの変化、さらには個人の働き方の変化について書かれていたが、この「ヒューマン2.0」は特に個人の働き方の変化について細かく書かれている。
たとえば、「シリコンバレーのIT業界で働く人の平均在職期間は2~3年」という事実。ベンチャー志向が強い人が多いシリコンバレーでは、本人が望まなくても会社がつぶれたり、事業方針が変更され、おのずと一社あたりの在職期間が短くなるという(もちろん、大企業はもっと安定しているし、安定志向の人もいる)。
「石の上にも三年」ということわざがあるように、日本社会にいると平均在職期間が2~3年と言われると驚いてしまう。ちなみに私は2~3年のシリコンバレーがいい、ということを言いたいのではなく、そのギャップがある、という事実をお伝えしたいだけなので悪しからず。
また、この本で紹介されている非常にユニークな概念は「シリコンバレーでは個人の所属は会社ではなく地域」というものである。個人同士のネットワークが張り巡らされていて、お互いに助け合うことがあったり、一方で会社も就職の際には必ずリファレンスを取るそうである。会社に所属する以上に地域やネットワークの重要性が高いのがシリコンバレーだそうだ。
これを読んでいて、戦前の日本社会もこのような状態であったのではないか、と思い巡らした。就社という概念が生まれたのは戦後である。それ以前は家族や地域に属しているという意識が日本人には強かったはずである。
少しずつ現代の日本においても就社という概念が崩れつつある。シリコンバレーのような状態にはすぐにはならないであろうが、我々も家族や地域の意義を再認識する必要があるのではないか。
そのほかにも現地に住み付いている人だから知り得る面白い話がたくさん書かれている。シリコンバレーに興味があるだけではなく、将来の日本においてのキャリアを考える上でも参考になる本であった。
コメント