先日とあるクライアントさんと共にPMIに関わるプロジェクトをさせていただいた。PMIとはPost Merger Integrationの頭文字を取った言葉である。日本語に訳すと合併後統合と言われる。
日経新聞を開くとほぼ毎日のように合併や買収のニュースが出てくる。データによるとすでに日本はアメリカについでM&Aが多い国になっている。日本企業が関係する企業の合併・買収(M&A)件数が、2005年は2,552件と過去最高となり、世界的に見ても04年の4位から2位へ躍進している。ちなみに首位はアメリカで9,045件である。(アメリカ調査会社トムソンファイナンシャルの調べ)
サブプライムローン問題を受け、昨年後半からM&Aの件数自体は減少に転じているが、M&Aはすでに経営戦略の一手段として当たり前になっている。
しかしながら、合併したもののうまく行かないというケースは非常に多い。合併後統合を考えた場合、戦略や組織といったハードの合併だけではなく、企業文化や社員のスキルといったソフトの統合が欠かせない。PMIについて書かれた多くの文献でも「新たな企業文化の必要性」は謡われている。しかしながら、現実はソフトの統合について軽視してしまい合併後の企業運営がうまくいかないケースが後を絶たない。
私はソフト面を統合していくプロセスを2つの企業文化を合体させるというよりは溶け合わせ蒸留化していくようなプロセスであると考えている。私はこのプロセスを企業合併における極めて重要な活動であると考えており、「合併後文化融合(Post Merger Cultural-fusion)」と位置づけ、合併後の企業経営者には強烈に意識してもらいたいと常々考えている。
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今回のクライアントとのプロジェクトは、この「合併後文化融合」を実現することを目指し進めていくこととなった。
具体的には二社の中核のマネジャークラス全員に対して、新会社における「あるべきリーダー行動」そして、「実現したい企業文化」についての深い対話を通じて理解してもらい、その議論の場を共有することで一人ひとりの意識や考え方をそろえていくことを目的としている。
同社ではマネジャー全員ということでいくと500名近くの人数となる。これを1クラス25名程度に分け展開をしていった。
当日のセッションでは、同業で競合であったそれぞれの出身会社時代の思いもあるので、それぞれのこれまでの取り組みの違いや、意識面の違いに関わる議論が相当出てくる。
しかし2日間ファシリテーションをしながら対話を尽くしていくと、「違い」よりも「同じ」という部分に目線が行くようになっていく。
そして、全員で「新会社におけるあるべきリーダー行動と何か」ということを練り上げていき、その「あるべきリーダー行動」を実現させるために、自らは何をこれから取り組まなければならないのか、ということを言語化し宣言してもらった。
最終的には非常に具体的で前向きな宣言をそれぞれが行い終了となった。今回の一連のプロセスを通じて同社の「合併後文化融合」に一歩近づいたと実感している。
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今後、日本企業における合併・買収は増えていくだろう。それをうまく行かせるためには「合併後統合」という戦略面、組織面の統合だけでなく、企業文化や社員の行動を合わせていく「合併後文化融合(Post Merger Cultural-Fusion)」が欠かせなくなっていくと考えている。
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