旅行をする際に一番よいのが現地の友人や知り合いにお願いして一緒に休日を過ごしてもらうことだと思っている。パック旅行のようなパターン化された旅行ではない楽しさを経験
できるし、久しぶりに会えるうれしさもあるので、できる限りそういったチャンスを探っている。
今年の夏休みはどこに行こうかと悩ましていたところ、中学時代からの友達がアラスカに行こうと思っている、と話していた。実は彼自身アラスカで生まれ、今もお兄さんはアラスカに住んでいるのだ。
以前、写真家でありアラスカに魅せられた星野道夫さんのエッセーを読んでから興味を持っていたし、オーロラも一度は見たい、と思っていたのでその旅に便乗することにした。
友人の兄はフェアバンクスというアラスカ第二の都市に住んでいる。第二の都市と言っても実は3万人程度の規模だ。
まず、その家に行って驚いたのが家はハンドメイドなのだ。ログハウスで少しずつ建築を進めており、現在1階部分が完成し、2階、3階部分は基礎工事が完成した段階になっている。 ユーティリティは電気のみ。水はタンクに汲み置きしている。ガスはない。まさに「北の国から」の世界だった。
初日の晩はバーベキューをしたのだが、そのバーベキューをするための火はもちろん薪を割り、その薪で火を熾すのだ。
2日目以降はキャンプに入る。バルディーズという氷河で作られた入り江に向かい、そこで鮭を釣る。結局私は2匹釣り上げることができた。これで当面の食料は確保できたこととなった。夜、その日釣った鮭を平らげ、ビールを飲みながら空を見上げると満天の星である。あまりのきれいさに息を飲む。これまでニュージーランドで見た空が一番きれいだと思っていたが、アラスカの方が圧倒的にきれいだった。おそらく空気がより澄んでいるのだろう。
そして、気が付くとボーと光が氷河の上に出ている。「アレはなに?」と聞くと「オーロラだよ!」との答え。眺めていると徐々に光の帯に変化していく。初めてオーロラが見れたことに感激してテントに戻った。
翌日の夜もオーロラがより強く出た。オーロラは空のカーテンという表現がされるが、その夜に見れたのは波を打つようでまさにカーテンであった。オーロラは、太陽の爆発によって生じる太陽風が地球の磁場にぶつかり放電する現象だそうだ。なんだか物騒な現象だが見る分にはとても幻想的だ。
その後もキャンプをしながら各地を転々とした。ビーバーダム(ビーバーが作った巣)に寒中水泳で泳いで渡ったり、氷河までハイキングをしたり、熊に出会ったり、と自然に触れ
ながらの日々だった。
最終日はフェアバンクスに戻り、地元の日本人が集まるパーティに参加させてもらった。そこにはアラスカに魅せられた人たちが沢山集まっていた。そのパーティでは普段日本で出会う価値感とは全く違う人たちに出会うことができた。友人の兄と同じく二人の手でロッジを作った夫婦、プランクトンの研究のためにアラスカ大に留学している学生、10年続けたサラリーマンを辞め写真家としての活動をされている方、毎年夏にアラスカに避暑に来るリタイアされた方、などなど。
それぞれの思いを持ってアラスカに渡ったのであろうが、皆さんがおっしゃるのは、アラスカにいるとゆったりと流れる時間を感じながら自分自身と自然を見つめることができる、ということだった。
星野道夫さんは以下のような言葉を残している。
「アラスカでオーロラが出ているその瞬間、日本では多くの人が電車に揺られている。日本の人はその時オーロラが出ていることを知らない。でも、もし一度でもアラスカの自然に触れ、オーロラを見たことがあるだけでその人の人生の豊かさの深みが変わってくるはずだ。」
「旅は心の洗濯」という言葉がある。私もアラスカの自然を体験し、日本の社会や価値観とは全く違うアラスカを知り、改めて自分の人生について考えてみたいと感じた。
さて、皆さんはどんな夏休みを過ごされたでしょうか。