この週末は移動も多かったので本を結構読めた。普段はビジネス書が多いが今週読んだのは「ウソ力の鍛え方」という絹谷幸二氏が書いた本である。絹谷氏はフレスコ画の大家である。東京芸術大学を卒業し、イタリアへ留学、その後数多くの作品を生み出し、近年は東京美術大学の教授として活躍されている方である。
なぜこの本を読もうと思ったのかというと、実は絹谷氏の息子さんと同窓で学んだ縁があり、たまたま本屋さんで「何か面白そうな本はないかなぁ」と思って本を眺めていると”絹谷”という文字が飛び込んできて、迷うことなく購入することにした。
読んでみると、芸術家から見つめた世界観をまとめていて非常に面白い。”芸術家から”と書いてしまうと僕らの世界とは違う話だ、なんて思ってしまうがそんなことはない。我々ビジネスパーソンとしても得るものは多い。なぜならば、芸術家、ビジネスパーソンというような職業を超えて、人としてどうモノを捉えるべきか、どう生きるべきか、ということが語られているからである。
心に残ったメッセージをここでピックアップしておく。
--------------------------------------------------------------------------
-この世のほとんどの価値や観念は変わるということを受け入れることができるかどうか。そこに精神の飛翔性を持てるか失うかがかかっている。
-大地に這いつくばってものを見るだけではなく、鳥のように精神に翼を持って羽ばたいてみることが必要になる。すると物事をあらゆる方向から見ることができるようになる。
-知識で学ぶことと、知識以外の感性で受け止めることと、両方を身に付けなければならない。
-「影」という文字は、光が盛んに照り輝いている様子を表している。光と影は相克しあうものではなく、光が盛んになるほど影はその色を濃くするものである。
-楽しさが最高潮のときはいつか訪れるかもしれない悲しみのときを、苦しい逆境にあっては心の灯火となっている楽しかった日を思わなければならない。
-新しい発想は、時代から少し浮くことのできる自在さを持つことによって生まれる。創造の喜びや知的な刺激がなくなった集団は取り残されてしまう。
-小さく呼吸せずに大きく吸ってみる。大きく構えることによって、今まで見えなかった世界が見えてくる。野球で言えばバッターボックスに立って、ねらい打つのではなく、思いっきり振り切ってみるということ。当たった後はボールに聞いてくれというのはおおらかな気分。無心。素朴な心を取り返してほしい。打算や小ざかしい計算は捨てて、キャンバスに全身を投げ出してみる。
-おおらかな笑いには無限の開放感への誘い。流す涙にきらめくのは生きているあかし。古代の人たちが持っていた包容力のある、豊かな心が現れてくる。すべてが機械仕掛けの現代社会にあっても、裸の心はみな同じ姿である。
-作品が与える感動は、技術の優劣によるものではなく、つくり手が熱い心を制作を通じて、生き生きと貫くことによって生まれるのである。
--------------------------------------------------------------------------
絹谷氏のメッセージは、よりよく生きるためには
「小さくまとまるな、思いっきり取り組め」
「万物は流転する、とらわれるな」
ということが大切である、ということであろう。我々はついついチャレンジを怖れたり、過去に囚われたりしてしまう。このような人としての性を超越することが、よりよく生きるため、人として成長するために必要なのだ。
コメント