「レクサスとオリーブの木」をやっと読み終えた。この本はニューヨークタイムズの記者が今日のグローバル化の動きを分析したものである。出版されたのは5年前の2000年であるが、今読んでも参考になることが多かった。
実はこの本、今から1ヶ月前に買った。ロサンゼルスに向かうの飛行機の中で読もうと思って買った本であったが、飛行機の中では映画を見まくってしまい、結局、この本にほとんど目を通すことが無かった。
ただ、この本が面白くないというわけではない。非常に参考になることが多かった。
急速に進行するグローバル化、その象徴がレクサスである。そして、人間が根源的に持っている我が民族や地域や土地への愛着、この象徴がオリーブの木である。そのある意味対極にある両者の間に我々が置かれているのである。
グローバル化の進展は3つの変化がその根底にある。その3つとは技術の民主化、金融の民主化、情報の民主化である。
技術の民主化とは、コンピューター化、小型化、デジタル化により、世界を一つにつなぎ、製造であっても誰でもできるなったことを指す。
そして、金融の民主化は、60年代のコマーシャル・ペーパー(CP)市場から始まっている。CP市場は銀行によるマーケット独占の時代を終わらせた。そして、ローンの”証券化”が始まる。そのローンを分割して債券にして売り出されていく。このようなプロセスを通じて、これまで手を出せなかった投資家や会社、個人に様々なチャンスが広がった。
情報の民主化とは、インターネット、TV、衛星放送等により、あらゆる壁を越えて情報を得ることができるようになったことを指す。
このグローバル化により、地球全体に競争相手がいるようになり、また一方で地球全体がマーケットにもなる。その結果、最高のプレイヤーや最高の製品・サービスを提供できる人や会社が、膨大な利益を上げる構造になり、所得の格差が拡大している。
グローバル化に乗り切れない人々や国は抵抗をしようと試みる。しかしながら、ますますそれが加速していくことは止められない。だからこそ、我々人間が根源的に求める”オリーブの木”と、ますます加速していくグローバル化の両者が併存できるようにしていかなければならないと著者は言う。
このような大きな根底に流れる変化の上に我々自身の生活や仕事が存在している。日々の生活をしているだけではなかなかこのような変化に気がつくことができない。そして、ゆでがえる現象のようにある日突然大きな変化を知り、手遅れになる可能性がある。
同書を読むと、根底に流れる変化がどのような歴史的背景で生み出されているのか、そして、その変化の特徴や危険性などについて理解することができる。
高く広い視野で「世界」を見つめるには非常によい本である。
コメント