NHKでやっているNHKスペシャル「世界3地点同時ドキュメント」を見たが非常に興味深かったので共有したい。
このドキュメントは、地球上のどこかで起こった出来事が、遠く離れた場所を揺さぶり、それが増幅しながらさらに全く別の場所へと連鎖していく、その様を世界の3つの地点で起こる一見つながっていないような出来事を追いかけながら、地球規模で巻き起こるうねりを記録していくという趣旨である。
今回のテーマは「移民」である。今回は主に3人の人々に焦点を当てていたのだが、1人目がエチオピアからイスラエルに移住する家族の長。もう1人がイスラエルからドイツへの移住を希望する若者。そして、3人目が両親がドイツに移住してドイツで生まれ育ったトルコ人である。
イスラエルはパレスチナ人が急激に増え、一方のユダヤ人は少子化が進んでいる。ユダヤ人の絶対的多数を維持するため、エチオピアに住んでいるエチオピア系ユダヤ人を優先的に受け入れる移民政策を実施している。あるエチオピアの家族はその政策に乗ってイスラエルに移民として向かうことを決意する。しかし、父親とその家族は認められるが、娘夫婦は移民として認められない。娘の夫がユダヤ系ではないからである。娘は家族が引き裂かれることに悲しみで涙を流す。一方で父親はイスラエルでのエチオピア系ユダヤ人に対する差別の現実やテロの状況は知らない。情報を得る手段がないからである。
ユダヤ人の若者は、イスラエルとパレスチナでの血で血を洗う対立を嫌ってドイツへの移住を決意する。そのことを母親に伝えるのだが、母親の親類はすべて第二次世界大戦でドイツで殺されている。母親は泣きながら息子の決意に反対を示すが息子の決意は揺らがない。しかしながら、この若者もドイツでの具体的なチャンスを得ているわけではない。また、ドイツでの移民の職業事情や扱いについてはほとんど無知に近い。
ドイツでは、国の少子化が進む中で積極的な移民政策を取っている。ただし、知的専門能力を持っている人は優遇されるが、それ以外の人は優遇されない。失業率が10%を超えるドイツでは、ドイツ人ですら仕事を得ることが大変で毎年15万人が海外に職を得るために移民をしている。過去、移民としてドイツの高度成長を支えたトルコ人移民も同様である。あるトルコ人の移民は過去5年間仕事がなく、失業保険で食べている。そして、それらの不満が鬱積しドイツ各地でデモが続いている。
それぞれ3人の現実を見るにつけ、国とは何か、国民とは何か、ということを考えさせられる。
グローバリズムが進み国と国を超える人々の移動は容易になり活性化している。先進諸国では少子高齢化に対応するため、労働力を移民によって確保しようという政策が取られていることがそれを後押ししている。
しかし、今回のドキュメンタリーでは、その過程で引き裂かれる家族、アイデンティティや尊厳を喪失する個人の存在が見えてきた。このような負の側面に焦点が当たっていたが、逆に、個人にとってどうしようもない現実を移民で国を移ることで改善がなされるという現実もあることは間違いない。
一方、国としても経済力を維持するためには人口減を食い止める必要があり移民政策は避けられない手段なのかもしれない。
国連移民レポートによると、日本は60万人を超える移民を毎年受入なければ今の労働力を維持できないと分析している。このレポートに対する反論は考えられる。例えば、「新・日本の経営」というアベグレン氏の本では、日本は移民を受け入れなくとも、定年の延長、女性の労働比率を高めることや産業用ロボットの進化によって十分な労働力を確保できる、という提言がなされている。
さて、日本はどちらの道を進むべきなのか。また、世界各国はどのような道を進むべきなのか。今私に答えはないが現実に目を背けずに考えていくことが大切なのだろう。
いずれにしても、大変興味深いドキュメンタリーであった。
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