年末年始に読んだ本で強烈に心に残っているのが「BUSINESS AS UNUSUAL」。この本はザ・ボディショップ創業者であるアニータ・ロディックが書いた本である。
この本の最初は「ビジネスで何をしても記憶に残らない。社会貢献だけが人々の記憶に残る」という一行から始まる。
アニータはさらに言う。「ビジネス界の重要な問題のひとつは、拝金主義が文化的に容認されたことだ」と。そして、「ビジネスに必要なのは、やさしさに立ち返ることと、CEOへの巨額な報酬などのえがつないものを排除することだ。何千人もの人々の首を切って100万ドルのボーナスを享受するのは、人間としての罪だ。」
昨今の日本の拝金主義的な傾向を思い出させられる。
今ではボディショップのトップとして活躍するアニータは、子供時代は両親が経営するカフェやクラブで働いた。それを切り盛りする母親からアニータは「人生は複雑ではなく仕事と愛だけだ。」と教わって育ったそうだ。
そのアニータが定義する起業家とは何か。それは「違うドラムの音に合わせて行進する種類の人間で、主流に合わせている自分自身の姿を想像することができない”生まれ持ってのアウトサイダー”」というモノで非常にユニークである。
そして、起業家へのアドバイスとしては、2つ。
「常にチャンスをうかがえ」
「アイディアに情熱を燃やせ」
同書では、それ以外にもボディショップを成長させていく過程で直面し、学んできたエッセンスを余すことなく書かれている。
特に後半では、グローバリゼーションの進展により、搾取されている力なき人々への支援のストーリーについても語られている。たとえば、ルーマニアやボスニアでの子供たちへの基金設立の話や、ナイジェリアに石油開発のためにシェルが進出してそのために生活圏を荒らされてしまったオゴニ族への支援の話など、営利を目的にするだけではなく、社会貢献のためのボディショップの活動について詳しく語られている。
このような活動を企業として実践できるのは、アニータの冒頭の言葉・思いがあるからである。
最後に自らがビジネスで学んだこと、ということを10個書いているのだが、その中で私が一番重要であると感じたことは以下である。
「私が長年の間に得た知恵は、すべて人と違うビジネスをしようとしたことから生まれた。私たちは当初から人と違う存在でありたいと思っていた。販売する製品とその効果について、徹底して正直でありたいと考えていた。化粧品業界の現状に疑問を呈したかった。社会的・環境的変革を、私たちの活動すべてに取り入れたかった。そして、この新しい規範を指示し実践する企業を構築しようという姿勢は決して揺るがなかった。
(中略)私は、ザ・ボディショップが最強になり、最高の収益を上げ、最大の小売企業となることに関心はない。ただ、ザ・ボディショップに最高の、ハラハラするほど刺激的な会社であってほしい-そして、ビジネスのやり方をかえる存在であってほしいのだ。」
ビジネスのあり方、ビジネスパーソンとしての生き方について考えさせられる本である。
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