本屋を歩いていると「成功請負人インプレサリオ」という名前が目に飛び込んできた。インプレサリオという聞きなれないワードにひかれて同書を手に取る。読んでみると、かなり面白い。
インプレサリオとは、もともとはラテン語から派生した言葉で、オペラのプロデューサーのことを言ったそうだが、今では転じて、力のあるプロデューサーを指すそうだ。
そして、この本は、CIA(クリエイティブ・インテリジェンス・アソシエーツ)という会社を設立したシー・ユー・チェン氏が書いた本である。同社は多くのレストランの空間デザインを手がけ、最近では、ナイキやギャップ、ユニクロ、東京三菱銀行などのマーケティング戦略のプロデュースを手がけている。
この本を気に入ったところは、シー・ユー・チェン氏は波乱万丈のビジネスライフを送っているのだが、その内容が面白いからではない。それではなく、同氏が最後の章でまとめている「僕の考える人の幸せ、自分の幸せ」というところが、非常に考えさせられるのだ。
たとえば以下のようなところ。
-若いころは、絶対にこれがほしい、こうしたい、こういう生活がしたい、というのがあったのですが、ある程度、自分が到達したい生活ができると、それはまったく無意味だなというのが今の心境です。それよりも、スタジオで毎日議論しながら、「これそうじゃないだろう」「こうなんじゃない?」と、みんなで作り出しているプロセス自体が、とても楽しいのです。
-人間の幸せは、もっとすごく単純なところにあって、とりあえず、人間一人ひとり誠実にそして謙虚に楽しく生きていればいいのだと思えてきます。
-面白い仕事を見つけて、面白いものを作って、みんなで楽しいことをやって達成できて、その繰り返しの中で、最終的には家族の大切さに気付くのが幸せじゃないかと思います。
-幸福という価値観を、金、物、社会的地位、挑戦というかたちで人間は手に入れようとします。経験を積むと、ある人々には、心の目が開けてきます。心の目を通して、人間は内面の自分、心の平安、感謝する気持ち、慈悲に気付き始めます。
-本当に成熟するには、少年の心を持ち続けながら、大人として成熟することです。
-僕達は子供のころから、論理的に認識思考に基づいて、A、B、CだからDと思考することを教えられます。テクノロジーの進歩とともに断片的な専門分野から解釈するので、全体性を見ることがなかなかできなくなります。いま求められていることは、双方間も含めて全体を包括的に、球体的に捉えることのできる思考体系を作ることです。
いずれも自分ができていないことを指摘されたようで、グッと考えさせられる本でした。良い本に出会った。
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