神戸大学経営学研究科の教授である三品さんが書かれた「経営戦略を問いなおす」を読む。三品さんの本では「戦略不全の論理」を以前読んだことがあるが、同書は戦後の日本企業をデータをもとに解析していて、また、そこからなぜ戦略が生まれないのかを看破していて非常に読みごたえがあった。
この「経営戦略を問いなおす」では、「戦略不全の論理」同様、まずは定量的に日本企業の低迷について指摘している。例えば、「日本の上場企業672社を40年間に渡ってみてみると、売上は目覚しい成長を示しているが、営業利益率を見てみると下降の一途を辿っている」と述べられている。また、売上は増加しているにも関わらず「日本企業の一社当たりの営業利益額は1960年83億円、70年は110億円、80年は106億円、90年117億円、2000年には111億円」となっていることをデータから指摘している。
ただし、これはあくまで平均値であり、その中でも経営戦略をうまく作り出し成功している企業が存在している。たとえば、花王、キヤノン、トヨタ、ヒロセ電機、キーエンスなどの企業であり、同書ではそれらの企業を参照しながら、経営戦略について「立地」と「構え」、「均整」という3つの軸で解説されている。
さらに経営戦略立案におけるトップダウンと、日本企業の現場の自律性という背反しがちな両者をバランスよく保つことの重要性を説明している。
では、どうしたらよい戦略を立てることができるのか。その問いに対しては経営戦略は人に宿るとし、より良い経営戦略を立てるためには「観」と「経験」と「度胸」を身に付けることが重要であると述べられている。
この本は日本企業を俯瞰的に見て経営戦略のあり方を見直すことに役立つとともに、キャリアを考える本としても役立つという感想を持った。特に経営者を目指すためには、どのように自らに世界観や歴史観、人間観、事業観を身に付けるべきかということや、どのように経験を得る場を獲得するかということを考えさえられる本である。
「経営戦略」の基本知識を学ぶ際には、ぜひ合わせて読みたい本である。
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