「コミュニケーションは受け手が決める(Communication is response, not intention.)」という言葉がある。これはプレゼンテーターやリーダーが発言する際に、相手のわかるような言葉や表現を使う配慮を心がけるべき、ということを意識させるためによく言われる言葉である。
この言葉、私がロジカル・コミュニケーション系のクラスをやる際には必ずお伝えしているのだが、最近この言葉だけでは限界があるとも感じている。受け手が聞こうとする意識・態度がない限り、いくら発信側が配慮をしたとしてもコミュニケーションは成立し得ないと考えているのだ。
このようなことから私が今考えている結論は、書いてみると当たり前なのだが、「コミュニケーションは受け手と話し手の双方により成立させるもの」というものである。
そんなことを考えている中、素晴らしい本に出会った。グロービスの先輩であり、一人の師匠として仰いでいる船川淳志さんが書かれた「ロジカルリスニング」である。
この本ではロジカルリスニングを「相手の話を聞きながら、相手の頭の組み立て方とその意図を理解するスキル」と定義している。
「実際に読む・書く・聞く・話すというコミュニケーションの基本動作の中で最も使用頻度が高いのは聞く作業である」と述べられている。
サンダーバード大学院ロバート・モラン教授によると「4つの動作の使用頻度は、聞く:45%、話す:30%、読む:16%、書く:4%、という順位にも関わらず、教育での優先順位が、書く>読む>話す>聞く、となっている。(アメリカの事例)」となっているとのこと。
一方で、ビジネスのスピードが速まり、職場の多様性も高まっている。そのような環境化で、的確にコミュニケーションを進めるためには、論理的に考えたり、論理的に話すだけではなく、周囲の人の話を的確に理解することの重要性が高まっている。
つまり、聞くという基本動作は必要性が高まっているわりに教育がなされていない領域なのである。
この本では体系的にロジカルリスニングについて丁寧に解説がなされるだけではなく、ビジネスの現場でどのように活用していけばよいか、ガイドされている。
コミュニケーション力やファシリテーション技術を高めていきたい方にとっては必須の書である。
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