最後に今回のサバティカルを経験し、感じた雑感を書いてみたい。
■国という枠組みを超えた活動が増えている
CERANに行ってみたのだが、受講生はヨーロッパ各地から来ている。そして、それぞれの必要性に応じて英語の学習を行っているのだが、彼らに共通しているのは国という枠組みを超えて活動をしているということであった。
たとえば、EUに勤めており多国籍の環境の中で仕事をしている女性。ヨーロッパの会社がアメリカの会社と合併をし、二国間での連携が必要になってきているディレクター。ファンドの運営会社におり、出資者は世界各地にいるというファンドマネジャー。クライアントはドバイ、インド等に広がりつつあるコンサルタント。世界的な難病を解決するために世界的な委員会を組成しているドクター、等など。
また、仕事だけではなくプライベートも、以前はロンドンに住んでいた、イタリア出身だが今はドイツで働いている、アメリカ人だがヨーロッパで働くことになった、というのが当たり前になっている。
そして、彼らと話し合っていると、年々国という枠を超えての仕事が広がってきていると言う。経済的にも、政治的にも、国という枠組みを超えた活動が今後もますます増えていくだろう。
■その中で、英語が世界の共通言語であり、みな学習に力を注いでいる
そのような環境化において、互いの考えを伝えわかりあうためにも英語という言語ははずすことができないのが現実であると感じた。
今回のグループレッスン仲間はヨーロッパの格式高い会社のディレクター、世界的な難病に対峙しているドクターもいたが、40代、50代である。その方々が必死になって英語を学んでいる。もちろん、ヨーロッパなので言語の構造は似ているため、軽い会話はできるのだが、本格的に議論するためには自分たちの英語ではまだまだであると感じていると言っていた。
そして、50代のディレクターはだれよりも予習・復習に余念がなく、関心するぐらいであった。
■では自分自身は・・・
その中で、自分自身はどうか。残念ながら英語の力量はまだまだである。今回の学習機会を通じて学べば学ぶほどもっと学習せねばならない、と感じた。ただ一方で、どれぐらいまで自分自身を高めればよいかのベンチマークが見えてきたことが一番の成果であったと感じている。
そして、それ以外にも感じたのは、歴史や政治についてもっと学習する必要があるということだ。ランチやディナーの席になると、EUの政治や昔からの歴史的な繋がりを話し合うことが本当に多かった。また、日本の歴史や政治について、また、今後の中国について同じアジアであるから、ということで意見を求められることが多かった。
英語力もそうであるが、歴史や政治といったものをもっと学んでいく必要があると感じた。
その話とも関連するのだが、以前、日経新聞に出ていた多摩大学中谷巌学長の「グローバル時代に通用するリーダーとは」というコラムを紹介したい。
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日本企業のグローバル展開が加速しています。実際、最近の日本企業の営業利益に占める海外比率も年々上昇しており、一見グローバル化が成功しているように見えます。
しかし、課題が山月にしているのが現実です。その最たるものがグローバル人材の不足という問題です。日本企業のグローバル展開には歴史的には三段階に分けられると思います。第一段階は輸出を中心とした国際化です。第二段階では、製造業の海外生産シフトが伸展し、日本独自のきめ細かい「ものづくり」のノウハウを海外工場に移植することで国際競争力を維持・発展させました。
しかし、これから本格化する第三段階のグローバル化においては、経営理念や戦略を含めたより高度な、経営全般におけるグローバル展開が必要になります。日本流の「ものづくり」を移転する第二段階と違って、日本本社と現地法人のマネジャー間の深いコミュニケーションが必要です。ところが、これがうまくいかず、現地法人の経営が「凧の糸が切れた」状態になってしまうケースが頻発しています。
日米欧企業のグローバル化を比較しますと、欧米企業は経営理念や戦略を現地法人に浸透させることに重きを置き、オペレーションは現地化する傾向が強い。他方、日本企業はオペレーションの移転を最優先し、経営理念や戦略面など高度なコミュニケーションを要求させる部分はそれぞれの現地法人に任せてしまうケースが多い。
しかし、これでは現地法人は「凧の糸が切れた状態」になる。そうならないためには世界の人々と「深く、意味のあるコミュニケーション」ができるビジネスリーダーが存在することです。明確なアイデンティティとグローバル戦略を持っており、それらを世界で共有するコミュニケーション能力が不可欠です。
日本企業のトップとしては、日本の歴史や文化に通暁するとともに、世界のマネジャーたちが共感できる世界観と歴史観を持っていることも重要です。
自国の歴史や文化を深く理解することで、自社の強みの源泉を理解することができるようになります。なぜなら、ほとんどの場合、日本企業の強さは「日本文明」をバックボーンにしているからです。繊細な自然観からくる品質のこだわりに加え、社会的安定性からくる「配慮の文化」も日本精神の競争力を生み出しています。
米国は普遍的な論理で勝負する国です。特殊な文化を排除した「普遍主義」より、マイクロソフト、グーグルなどIT(情報技術)・ネット産業に見られるグローバルな浸透力を誇っています。欧州企業のブランドの多くにもそれぞれの国が持つ固有文化に規定されています。フレンチブランドには宮廷文化の、ドイツブランドには質実剛健なマイスター文化が反映されています。
グローバルカンパニーのトップには、このような文明理解を含む、世界に通用する教養を積むという努力が必要でしょう。そうすることで自社の競争力の本質が語れるようになるからです。それがなければ、第三段階のグローバル化を乗り切ることは困難だと思います。
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世界観、歴史観、高めていきたい。