あるクライアントで新しい取り組みを行ってきた。単的に言えば、個人の行動変容に深く入り込む取り組みである。
このクライアントをX社としよう。X社は外資系企業であり、ここ数年グローバルにも成長をしているし、日本法人も成長中である。さらに今後新製品も予定されていてマーケティングを強化していく必要がある。
この会社のマーケターのリーダー層が育成対象であった。マーケターのリーダー層の課題は、他部署も含め多くのメンバーを巻き込まねばならないもののどうしても自分たちが作ったマーケティングプランを周囲に発信するだけになってしまっている。
その結果として、マーケティングプランがマーケターのプランと見られてしまい、Our Planになっていない、という問題意識を同社のトップマネジメントが持ったのだ。
そこで、まず数日のセッションを実施し、リーダーシップのコンセプトを押さえてもらいつつ、ファシリテーションのスキルを学んでもらった。さらには、マーケティングを立案するために複数の部署を巻き込んで行うマーケティングプラン立案ミーティングでの実践を絡め、その実践を経て、もう一度集合し、振り返り(リフレクション)を行うセッションを実施した。
さらに、グループでの振り返りセッションのみならず、個別のフォローアップセッションを行って、個の行動変容を促していく、というアプローチであった。
今回特に新しい取り組みは、個別のフォローアップセッションのところである。マンツーマンで面談をし、行動変容を実現するために何が難所となっているのかを意見交換する中で掘り下げていった。
実施してみて認識したことは、行動変容の難所とそれを生み出している理由は「人それぞれ違う」というシンプルな事実である。
例えば、Aさんは十分な能力・経験があるものの、自分自身の役割を狭く捉えてしまい新しいチャレンジを避けている。Bさんは、自分の業務中心に物事を考え、部門全体の動きや課題に目を向けようとしていなかった。Cさんは自分が得意なプロダクトマネジャーという仕事を離れ、これまで取り組んでいないプロダクトマネジャーを束ねるリーダー的な仕事に飛び込むことを避けていた。Dさんは、自分自身の強みを見失い、自信を失っていた。Eさんは人間関係に悩み、その人間関係からモチベーションを落としていて新しいチャレンジをするモチベーションを減退させていた。
それぞれの難所とそれを生み出している理由はここではすべて書ききれないが、今回の取り組みを通じ、人間(リーダー)の奥深さを再認識するとともに、私自身人間理解ということを今まで以上にしていく必要性を感じている。
ちなみに私が意識しているセッションはコーチングとは違うと考えている。コーチングという手法と近いのだが決定的に違うのは、私なりにその人物を知った上で、あなたは○○ということをやるべきではないか、という具体的な提言を行うようにしている点である。答えを見いだせていない場合は、答えに近いことを提示しリードをするように仕掛けていく。
私は常々コーチングというアプローチには限界があると思っているからだ(コーチングvsリードする力)。今回の取り組みを名付けるとするとInspiringとなるであろうか。今後も今回のような取り組みにチャレンジしていきたい。
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