おとといのブログ「『決断力』から直感について考える」に引き続き、羽生善治氏の書籍「決断力」を題材に本書のテーマである「決断力」について考えてみたい。
直感を育むためには「経験」は欠かせない要素である。ただ一方で羽生氏は以下のようにも語る。
「一般に経験は人を強くするという固定観念があるが、いろいろ考えすぎてしまい、一番いい方法にたどり着くのに時間がかかったりしてしまう。また、判断に迷う材料も増えて、おじけづいたり、迷ったり、躊躇してしまったり・・・ネガティブな選択をしているときもあるのだ。(中略)
考える材料が増えれば増えるほど、これと似たようなことを前にやって失敗してしまった、というマイナス面も大きく膨らんで自分の思考を縛ることになる。
そういうマイナス面に打ち勝てる理性、自分自身をコントロールする力を同時に成長させていかないと経験を生かしきるのは難しくなってしまう。」
どうしても我々は過去の成功体験や失敗体験に従って意思決定する。マイナス面が見えてしまうと決断することに躊躇するのは人間だから致し方ないとも言える。本来、人間はリスクを避けたがるものである。それを乗り越えるために羽生氏は以下のように語る。
「リスクを前に怖気づかないことだ。恐れることは正直ある。相手を恐れると、いろいろな理由をつけて逃げたくなる。怖いから腰が引けてしまう。(中略) 私はそういうときには、『あとはなるようになれ』という意識でさしている。どんな場面でも今の自分をさらけ出すことが大事なのだ。」
「怖いから下がりたい気持ちになるだろうが、一歩下がっても、相手に一歩間合いを詰められるだけだ。状況は変わらない。逆にいうと下がれば下がるほど状況が悪くなるのだ。怖くても前に進んでいく、そういう気持ち、姿勢が非常に大事だと思っている。」
つまり、”今の自分を捨てて前に飛び込むこと”が決断をする上では重要であると羽生氏は語るのだ。この文章を読んでいて、過去の自分の意思決定を思い出した。
私の背中を押したのは岡本太郎氏である。岡本太郎氏は「結果なんてうまくいかなくていい。体当たりすること、そして、それを通じてもがくことが生きるということだ」と言っている。この言葉があったから、新規事業に飛び込もうと思えたのだ。
羽生氏、岡本氏も”自らを捨てること”がなければ本当の意味での「決断」はできないと言っている。それは我々にとっては非常に難しいことであるが、「決断」をするためには忘れてはならない視点である。
「決断力」は非常に学びの多い著であった。
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