本日はトヨタ自動車株式会社人材開発室室長木村様にお越しいただき、「トヨタの人づくり」について語っていただいた。
トヨタさんに私が接点が生まれたのは実は今から5年も前になる。大阪オフィスで企業向け人材・組織開発事業(GOL)に携わっていた際に、トヨタさんの人事担当の方にアポをいただきお会いした。そのときはグロービスの紹介に留まり仕事の関係は生まれなかった。
しかし、その際に人事の方との面識が生まれたおかげで名古屋オフィスを開設する旨を報告に行く機会をいただけた。また、ばったり張社長にお会いすることもありご縁があるのではないかと密かに思いを寄せていた。
その後、何度かご訪問をしているうちにご提案するチャンスがあり、研修をお手伝いをする機会をいただいた。
今回はそのようなご縁もありセミナーの開催が実施された。対象を企業の人材育成ご担当者に絞り込んでご案内していたのだが、あっという間に定員いっぱいになってしまい、トヨタさんのネームバリューの高さを改めて認識した。
さて、当日は100名を超える方々にお集まりいただいたのだが、その中で印象的だったポイントを共有したい。
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・当社は新幹線。通常の電車は先頭の車両だけにモーターがついている。新幹線はすべての車両にモーターがついている。当社もすべての社員が動いてモーターを回す会社であるし、そうありたい。そのためには考える力(問題解決力)が必要不可欠。
・人間と動物の違いは「人間はモノを考える」ということ。考えなければ動物と同じになってしまう。だから、当社の仕事はどのような仕事でも考えるということをさせていく。それが人間性を尊重するということ。
・「働く」ということには「仕事」と「ムダ」がある。仕事とムダの違いは付加価値があるかないか。付加価値のつかないムダな動きをやめて、付加価値のつく仕事をすべき。
・シンプルなビジョンを示し、そこにむけて小さな成功を1つ1つ積み上げていく。それが、大きな変革を促す。
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昔トヨタさんに初めてお伺いした際に、他社さんへの営業ではあまり緊張しなかったのだが、説明をしていて緊張して手に汗をかいた。なぜだろう?と振り返ってみると、「それは事実ですか?」「それってなぜですか?」「それってどういう意味ですか?」という質問が次々に出てきたからである。
このような質問が出るのは、人事担当者が徹底的に深く考えているからではないか、という仮説を持っていた。
これまでのお付き合いや今回のセミナーを通じて、組織として「考えること」を貫いているトヨタさんの育成方針を知り、私が考えていた仮説が正しいこと、そして、その根底に流れる同社の価値観を確認することができた。そして、だからこそ、高い成果を上げ続けるのだということを理解することができた。
私が講師を行っているクリティカルシンキングをはじめとした思考系の科目は特にこの「考える」ということに力点を置いた科目であるが、その重要性をトヨタさんとの関係を通じて再認識している。