最近知り合いが本を出すことが非常に増えている。一昨日も書店によると「西尾久美子」というどこかで見た名前を発見した。
西尾さんと出会ったのは今から7年ぐらい前になるだろうか。私がグロービス大阪オフィスで勤務している際に、レポートの添削業務を外部委託するということになり、彼女にその仕事をお願いすることになった。それ以来のご縁である。
現在は神戸大学大学院経営学研究科で研究員を務め、経営学博士である西尾さんには今年の春にとある会合でお会いしていて、「実は本を出すことになるんです」とおっしゃっていて、しかもそのテーマが「京都の花街」ということで楽しみにしていた。
そして、出版されたのが、この本「京都花街の経営学」である。
京都花街とは言っても個人的には縁遠いため、その実態はよくわかっていなかった。せいぜい舞妓さんを京都の街中で見かけたぐらいである。
この「京都花街の経営学」は、そんな私にとっても、400年も続く花街のシステムや舞妓さんの生き様(キャリア)について、わかりやすく解説してくれている。
大変興味深いのは、舞妓さんや芸妓さんという”おもてなしのプロフェッショナル”がどのように成長していくか、そのプロセスをまとめた件である。
私は勝手ながら先輩の技を見ながら、自然と現場で習得していくのかと思っていた.。もちろん、その要素はあるのであるが、それだけではなく実は「女紅場」と呼ばれる技能育成の学校があるそうだ。ここで文化や伝統に関する一般教養、日本舞踏や茶道等の技能を学習していく。
つまり、お座敷という現場における「OJT」と女紅場という「Off-JT」の両者で育成するモデルなのである。
考えてみれば、舞妓さんになりたいと思って京都花街に15歳で来た女の子が1年足らずでお座敷に立つそうだから、相当なスピードで育成しなければならない。そうなると、現場での育成では間に合わないのである。
昨今の企業における育成も、若手社員にできるだけ早く戦力になってもらうために、OJTだけではなく、Off-JTも充実させていく動きが加速しているが、花街と似たような構図だというと言い過ぎだろうか。
この「京都花街の経営学」、私としては、京都花街というシステムが生み出す経済効果の掘り下げや、将来の方向性や可能性についてもっと深堀して解説して欲しかったが、入門書としては十分な内容であろう。
ぜひ一度花街で「おもてなし」を受けてみたいものである。
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