アンディー・グローブはインテルの経営者である。インテルという名前を知らない人はいないであろう。半導体業界の雄である。
実は、日系半導体メーカーの方々と仕事をすることになり、半導体について勉強を重ねてきた。もちろん、素人知識なので業界の方々には遠く及ばないが、大きな枠組みや技術的動向については掴むことができつつある。
その勉強の過程で、サムソンやインテルの本に触れていたのであるが、一番読み応えがあったのが、アンディー・グローブの書籍である。
以前も「Only paranoid can survive」というエントリーでインテルについて一部書いたが、今回の機会があって「インテル戦略転換」について再度読むこととしたが、学ぶことが多い。
インテルというと、「Intel Inside」というキャンペーンのもと、あやゆるPCに自社のマイクロプロセッサーが入っていることをアピールし、今でも大きなシェアを獲得している。それ以前のインテルは、メモリーが事業の柱であったが、メモリーからマイクロプロセッサーに柱を転換している。その転換のプロセスは外には見えないので、スムーズに移行したように思われがちだが、そんなことはない、という。
日本企業の脅威によってメモリー事業が相対的に負け始め、それでも大きなビジネスのネタになっているので、メモリーを捨て新たな方向性に向かっていくべきか、経営陣・上級管理者も悩みぬく日々が3年も続いたという。
同署でも紹介されているが、ドラッガーは「組織が変貌する際に必要とされるもっとも重要な行動とは、旧来の考え方で配置されていた経営資源を、新しい考え方に合わせて根本的に再配置することである」と言っている。
しかし、言葉にするのは簡単であるが、それを実行するのが難しい。特に”新しい考え方”は未来の話なので、本当に正しいのか、という確証が得られない中で変えていかねばならないからである。
だからこそ、リーダーの行動が肝になる。アンディー・グローブはこの本では「戦略的行動」が大切であると語る。もちろん、行動を実現するために「戦略的計画」も重要だが、それは具体的なインパクトがない。
それに対して、戦略的行動とは、新しい分野に有望な人材を配置するとか、これまで取引のなかった地域に営業所を開設すると言った例で、現在であり具体的なことなので、すぐに社員の注目を集め、変革への歩みを明確に示すことができる。
インテルが経験したような戦略転換点(日本企業の脅威を受けるが自社の主要商材であるメモリーから将来性が不透明だけれども可能性のあるであろうマイクロプロセッサーへの移行)を乗り越えるためには、この戦略的行動を一貫して取り続けることが成功の鍵だとアンディー・グローブは語る。
ますます変化のスピードが速まる環境下にいる我々は、今後のビジネスキャリアにおいて戦略転換点を何度も経験するようになるであろう。それをどのように乗り越えるのか、そのヒントがこの書籍には詰まっている。