ダニエル・ピンクの本はいつも新しい視点を提供してくれる。
私が最初に読んだ彼の本は「フリーエージェント社会の到来」であった。SOHOという言葉が日本に表れ始めた2000年代初頭、アメリカにおいて個人事業主として働くビジネスパーソンの拡大を指摘し、その存在をフリーエージェントと呼んだ。
二冊目に読んだ本は「ハイコンセプト」である。副題が、新しいことを考えだす人の時代、とあり、激変の時代の中では新しい発想が求められ、その中では左脳型人間ではなく右脳型人間の重要性が語られていた。(以前書いた書評)
いずれの本も世の中の新しい動きをとらえ、その根底・底流にある変化をとらえようとしていて学びが大きかった。そのピンク氏が新しい本を出したということを社内のとあるプロジェクトのメンバーから教えてもらった。その本が「Drive」である。
この書籍はビジネスパーソンの、また、人間のモチベーションについて書かれている。彼はモチベーションが三段階に進化していると言う。彼の言うモチベーション1.0は”生存”するためのモチベーション。原始時代から人間に求められてきた基本的な動機である。モチベーション2.0は”信賞必罰”によるモチベーション。産業革命後ビジネス社会で活用されてきた動機である。そして、新たなモチベーションが生まれているという。それがモチベーション3.0だ。”ワクワク感”から生まれる動機である。
例えば、ウィキペディア。金銭的報酬がないにも関わらず、それに関わることが楽しいから、役に立つから、という理由ですでに世界一の百科事典となった。3Mやグーグルが実施している20%ルール(就業時間の20%を好きなことに使っていい)もこのワクワク感を醸成するための仕掛けであると言う。
ピンクが整理したモチベーション3.0はマズローの欲求5段階説の5段階目の自己実現欲求と言っていることの本質は同じである。
今現在、グロービスで取り組んでいるハイパフォーマーインタビューで見えていることは、ハイパフォーパーには取り組む仕事に没頭し我を忘れている、ということである。この状態は心理学的に言えばフロー状態に近い状態になっている。そのような状態に入るためには何が必要なのか。
この点を掘り下げているのだが、今のところ見えている仮説は「自己認識」をすることが一つ。ピンクの説に従って考えると自己認識できている人は自分の動機をはっきりと捉えており、その動機に従って行動する・環境を整備するので高いモチベーションを維持しパフォーマンスにつなげることができる、ということ。
そして、もうひとつが「利他」という概念を持つことである。仕事を通じて得られることが自分の役に立つのではなく、他者の役に立つことを具体的にイメージできているか、ということがカギではないかと考えている。晩年マズローが欲求5段階説の上位概念が存在し、「自己超越Self-Transcendence」という自己を超えた何かへの動機が存在することともつながると考えている。
時代が大きく変わる中で、人のモチベーションを理解することは経営者、リーダーにとって必須であろう。そのためのヒントを与えてくれる本である。日本語版も近い将来出版されるそうだ。
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