以前からご案内していた星野リゾートの星野社長によるセミナーであった。今回は非常に速いスピードで定員いっぱいになってしまって申し込みを締め切ってしまった。さすが、星野社長である。知名度が高い。
今回はたっぷり1時間星野社長にお話しいただいた上で質疑応答を予定していた。
星野社長は冒頭から「私は合理的で正しい経営をしたいと思っている」ということをおっしゃっていた。
例えば、データを用いて経営をすること。顧客の声をしっかりとヒアリングをしてデータ化していく。また、顧客満足度を高めることが利益につながるのか、というブラックボックスを徹底的に定量的データをもとに調べていく。その上で投資の判断をしていく。このようにデータをしっかりと集めて合理的に判断することを重視されている。
合理性は人事にも及ぶ。社長として大変だった時期に入ってもらった社員には恩義を感じてしまい、どうしても高いポジションに居続けさせてしまう。本来は能力ややる気によって選ぶことが正しいにも関わらず。そこで、自分で決めるのではなく、立候補制にしてみんなで選ぶ体制に変えていった。
多くの会社はそうはいってもなかなか高いポジションの方をはずすことはできない。星野社長は、それは過去の実績に対しての報酬としてそのポジションを用意しているからであると考えた。それを逆手に捉えて、もしなんらかの成果を上げた場合、その成果によって生まれるであろう5年間の利益を現在価値に割り戻し、その5%を先に支払ってしまう、という成果報酬制度を導入している。その結果、社員も会社も対等になるわけである。
一方で合理性の追求だけではない側面もお伺いすることができた。たとえば、「星野社長のモチベーションの源泉はどこ?」という質問に対しては、「家族や社員の方々が喜んでくれることが一番うれしい。」というお答えがあった。
また、「リゾートのコンセプトを言語化していく際にどのようなことに気を使っているか?」という質問には、「我々リゾートに働く人たちというのは、単純に人にサービスを提供して喜んでもらうことが単純にうれしい、という気持ちを持っている。だから、できるだけお客様が喜んでもらうためにこのリゾートはどう存在したいのか、ということを意識できるような言葉を選んでいる。」という答えであった。
このような気持ちの部分も相当意識して経営にあたっていることがセミナーを通じて感じられた。
セミナーが終わったのであるが、星野社長のご好意により、新幹線に乗るまでの30分だけラウンジに居ていただけるということになった。それをセミナーの最後にご案内したところ、名刺交換をしたい方々の長蛇の列ができていた。
皆さん、感動したのだろう。その列を見て、このような場を創れて大変うれしく思った。
お忙しい中、名古屋までおいでいただいた星野社長、また、平日の夜にも関わらずお集まりいただいた方々、そして、準備してくれたスタッフの皆さんに感謝!
水野さん
お聞きしてくれたんですね。ありがとうございます。もしも、主催者側ではなかったら手を挙げて聞きたかったことでした。
それにしても、社長も機能の一つ、という割り切りはさすがですね。
でも確かにそうですよね。あの社長しかできない、となったらGoing concernとしての会社は成り立ちませんもんね。仕組み化が肝ですね。
投稿情報: 井上陽介 | 2006-03-16 02:27
こんにちは水野雅之です。
井上さんの指令により(笑)以下の質問をしました。
「社長の立候補制や交替はないんですか?」
これは、
〉合理性は人事にも及ぶ。・・・
〉自分で決めるのではなく、立候補制にしてみんなで選ぶ体制に変えていった。
という話を受けたもの。
変革を促すために、機動的な小集団(ユニット)をつくり、そのユニットの責任者UD(ユニットディレクター)は立候補制、つまりUDになりたい人は「立候補」し従業員全員の前で、プレゼンをし、そのプレゼンが評価されればUDになれる。
逆に、UDから一般社員へ落ちる事もあるが、UD時代の貢献に対する充分な評価(ドカンと報酬を出す)で精算するため、落ちても後腐れがない。
しかも昇進・昇格と言わず発散・充電と呼ぶ・・・これもキモですね、すみずみまで緻密に考え抜かれた仕組みに落とし込まれていると、感じ入りました。
で、先の質問を井上さんにささやかれ、星野さんにぶつけてみました。お答えは・・・
社長というと偉い人、何でも決める人、みたいに曖昧。組織にその機能があればいいのだから社長というものはいらないかもしれない。後継者問題もあるので考えている。
とのこと。「社長=組織の機能の一つ」との捉え方は、「失敗しても怒らない、怒ることでは改善しない、その原因を突き詰め仕組みに落とし込むことだ」と言われた星野さんらしい答えと思いました。
ちなみに、「そのメガネいいですね」とも言ってみました(たぶん会場の全員が凝視しましたよね!)、サイドのツルが竹製で熊手のようになっているやつ、変わってるなあ~ 友人に貰ったものだそうです。
投稿情報: 水野雅之 | 2006-03-15 13:50