11月8日には東京で「CEO'sミッション」というイベントに参加してきた。このイベント、何がすごいかというと豪華な講演者であるということである。
最初のスピーチを「知識創造の経営」を書いた野中郁次郎教授、続いてソニー最高顧問出井伸之氏がされた。さらに武田薬品工業武田会長等など。そして、駄目押しが、マイケルポーター教授の生スピーチとヘンリーミンツバーグ教授のビデオ中継スピーチが行われる。
今回私がこのCEO'sセッションに参加するチャンスを得たのは、私の上司にもあたる鎌田英治がベネッセ森本会長と産業再生機構斎藤社長とのパネルディスカッションに参加する機会をいただいたためである。
このパネルディスカッションの内容も含めて、大変刺激の多い1日となった。1日の間で多くの経営者や学者、識者の話を聞き、今の経営者には「細部へのこだわりが命」、「人間理解の重要性」という2つの点の必要性が高まっているという印象を持った。
■細部へのこだわりが命
この日最初のパネラーを務めた野中さんは「神は細部に宿る」ということをおっしゃっていた。また、竹中さんも小泉さんを引き合いに出しながら「戦略は細部に宿る」ということをおっしゃっていた。武田さんも言葉は少し違うが「日々当たり前と思うことを実行することが大切」ということをおっしゃっている。
大きな絵を描いて提示すること、ビジョンはこれだといって宣言すること、これは経営において必要不可欠である。しかしながら、難しいのはそれを具体的な手順も含めて現場のメンバーと考え、ビジョン実現のために一つひとつの戦略を実行していくことである。その実行がなければ、戦略不全に陥ってしまうということを多くのスピーカーの方々がおっしゃっていた。
10km先に行くと素晴らしい場所がある、ということを言うだけではなく、そのために1m進むために何をすべきかということを具体的に詰めていくことの意義を再認識した。これは最近私がキーワードのようによく言っている「凡事徹底」とも通ずる。
■人間理解の重要性
もう一つの学びは経営において人間理解の重要性を再認識した。もちろん、ロジックをもとに考えを深めていくことも極めて重要であると考えている。だからこそ、私もクリティカルシンキングというクラスでビジネスにおいてロジックがいかに大切かをお伝えしているわけである。
しかしながら、それだけではダメだ。経営は人の織りなす複雑系の世界である。そして、人は感情を持った生き物である。それをマネジメントすることが経営者の役割であるということだ。
ミンツバーグ氏もマネジャーはサイエンス(理論)だけではなく、クラフト(現場)、アート(直感)の3つについてバランスよく理解していく必要がある、と言っている。つまり、現場で人間ともまれる中で得る経験を持たないマネジャーはダメだということだ。
また、野中先生は現在は本田宗一郎を題材にしながら、人間の感情の機微を掴まえることのできるリーダーのあり方について研究されているそうである。いずれも理論やロジックも極めて重要だが、それだけではなく、人間理解を深めていくことが経営者には必要であるというメッセージであった。
我々が多くの企業の方々と議論していても、これらの「細部へのこだわり」、「人間理解」についての必要性を聞くケースが増えている。そのようなことを学べる場作りを今後も意識していきたい。